集客の最大化 × 業務効率UP
クラウド型予約管理システム『SALON BOARD』
徹底した業務支援から質の向上に
サロンが成すべきことに集中できることで、お客さまがより良いサービスを享受できる。
それが目指すべきマッチング
株式会社リクルート(北村吉弘代表取締役社長)が運営する、国内最大級のヘアサロン・リラク&ビューティーサロンの検索・予約サービス『ホットペッパービューティー』。クーポン集客というイメージが先行しているかもしれないが、実は裏側で業務支援に注力。クラウド型予約管理システム『SALON BOARD(サロンボード)』を提供している。
同システムは2021年7月、新機能の提供も開始するなど、さらなる進化を遂げているが、サロンにとってDX化に向けた有効なツールとなる。
そこで入社当時から『SALON BOARD』立ち上げに携わり、現在は『SALON BOARD』企画グループのマネジャーを務める長尾美樹さん(プロダクトデザイン室 ビューティークライアントソリューショングループ マネジャー)にインタビュー。機能はもとより、どのような想いが込められているのかをお話いただいた。
長尾美樹
株式会社リクルート プロダクトデザイン室
ビューティークライアントソリューショングループ
マネジャー
現場と他分野の知見を足し合わせて
長尾さんが『SALON BOARD』の開発に携わるようになった、その経緯から触れていきたい。聞けば入社は2009年とのこと。前年の2008年にようやく日本で初めてiPhone(iPhone 3G)が発売された、と言えばわかりやすいだろうか。インターネットサービスとしてもまだ、いわゆるガラケーに特化したシステムが求められる時代だった。
そうした中で配属されたのが美容領域であり、業務支援に携わることになったと教えてくれる。長尾さん自身は美容師ではないため、業界についてはわからないことばかり。それでも「髪を切るという身近でイメージしやすい、日常消費と言われる領域ですから若手でも入りやすかったのだと思います」と話す。
その後は同じサービス業である飲食領域、さらに旅行領域へ異動。美容領域で行なった業務支援の知見を他領域にも展開する、という背景もあったそうだ。そうして現在は美容領域に戻り、これまでの経験を生かしてさらなる業務支援に取り組んでいるという。
では長尾さんは業界に対して、どのような寄り添い方で事に当たるのだろうか。伺ってみると「美容業界におけるプロフェッショナルは美容師さん。また、どのような業務を行なっているのか、課題がどこにあるのかはすべてサロン様が持っているという考えが根本にあります」としたうえで、現場の知見を重要視しつつ、そこに他分野の知見を足し合わせ、より良いものを構築していくといった考えだと述べる。「サロン様が課題に感じていることを解決していきたい。その想いで携わっています」
なぜ求められるのか、その理由を探る
ただしサロン自身が課題だと認識していない場合もあると続ける。というのも周りからは非効率に見えたとしても、以前から当たり前に取り組んでいることであればそれが通常業務だから。
そのため『どうしたいですか?』と聞くだけでは、答えは返ってこないというのだ。「システム構築の失敗例として一般的にも挙げられることなのですが、クライアント様の意見をそのまま反映すると、業務にフィットしないシステムになってしまうことは少なくありません」
当然、クライアントにとっては『使えないシステム』という評価。言われた通りに構築したにも関わらず、だ。したがってクライアントの声を聞くことは重要だが、そうしたニーズが生まれた理由は何か、なぜ声が挙がるのかを探ることを一番に大切にしなければならないと話してくれる。
たとえば予約管理。当時は電話予約に紙の台帳が主流のため、電話が鳴れば施術中であれば手を止めて対応し、書き込まなければならなかった。
その解決策のひとつにとインターネット予約の導入を勧めようにも、紙の予約台帳に記載後、インターネット予約の設定も操作するといった具合に、煩雑な業務をすることになってしまう。「サロン様にとっては非常に手間がかかることもあって、webでの集客というものになかなか注力できないようでした」
効率化を図れると言われても、サロンとしてみれば業務が増えてしまっている。この構造から、忙しい土・日曜日などはインターネット予約の受付けを止めていたり、一週間以上先でしか予約を取らなかったり。導入したとしても、いつしか消極的な使い方になっているケースは多かったというのだ。「紙で管理しつつ、webシステムも操作する。この二重管理構造が、インターネット予約普及の妨げになってしまっていると考えました」
現場の一次情報を獲得
そこで最初に取り組むべきことは、予約業務自体の変革だと行きついた。具体的にはシステム化による予約の一元管理。その考えから『SALON BOARD』が立ち上がっ
たのだ。
とはいっても前述のような時代背景。システムというものはなかなか受け入れられず、プロトタイプを持っていくものの、『紙のほうが便利』と言われてしまうことも多かったと振り返る。「当初は私自身がサロン様の予約業務のフローをよく理解していないこともあって、このまま開発を続けても〝業務にフィットするシステムは作れない〞と感じていました」
ではどうするか。長尾さんが行なったことは、サロンに密着すること。ひたすらにヒアリングし、業務内容の把握に努める日々だったという。
こうした取り組みは美容領域に関わらず、実は同社の文化の1つ。『お客さま(この場合は美容師/美容室)に憑依する』ことを掲げ、たとえ開発担当だとしても現場の一次情報を獲得することを大切にしているのだとか。「もちろん今でもこの文化は脈々と受け継がれています」
実際の流れを違和感なく不便なく
こうして来る日もサロンに赴きヒアリングしていたそうだが、加えてプライベートでも毎週末、お客としてサロンに通い美容師の動きを眺めていたというから驚かされる。「サロン様がどういった業務をしているのか知りた過ぎたというか。業務を知れることにワクワクして、自然と足を運んでいました」
予約が入ればサロンはどのように対応し、どんな手順で紙の台帳に書き込んでいくのか。その書き込みはどういった内容で、どう使用しているのか。些細な言動に至るまで細やかに確認し、実際の流れをシステムに落とし込む。違和感なく不便なく、そのまま使える形に仕立てていくことを目指していたというのだ。
加えて現場で使われているツール自体にも目を向け、可能な限り予約台帳を集めていたと述べる。「ただし、最大公約数のように、すべてを網羅するようなシステムを構築してしまうと、非常に情報量が多くなり使いづらくなってしまいます。そこでどのような形式で、どこまでの業務をカバーするのか慎重に思案していました」
フィットさせるための努力
そのうえですべてのサロンにとって使いやすいUI(ユーザーインターフェース:とくにコンピュータとその利用者の間での情報をやりとりするためのインタフェース。利用者が触れる画面デザインや操作性)と流れを探り、ポイントが見つかるまで、プロトタイプ
を作ってはサロンに協力してもらい使用感を聞いていたと話す。「どのようなシステムが一番にフィットするのかを探る日々でした」
効率化を図れるデジタルツールとはいっても、使用するのは人の手。つまり使用感は画面上だけでは計り知れない。だからこそ実際に使ってもらいヒアリングするというように、地道にアナログ的なアプローチを繰り返していたのだ。「多くのサロン様にヒアリングができ、情報もすぐに入ってくるという環境は当社ならでは。他にはないと思っています。さらに協力的に参加してくださるサロン様も多かったことから、より質の高いシステム構築につながりました」
そして長尾さんが入社してから3年が経った2012年6月、『SALON BOARD』はついにサービスをスタートさせた。
後編に続く
【インタビュー】特別企画「株式会社リクルートが目指すマッチング」クラウド型予約管理システム『SALON BOARD』開発秘話<後編>
「まだ、ここにない、出会い。」を通じ自分らしい選択ができる世の中へ
同社の原点は1960年に創業した、大学新聞専門の広告代理店。当時、学生の就職先を選ぶ手段は学校の掲示板や教授推薦など限定的。就職先を吟味して自由に選ぶことが難しく、企業も優秀な人材獲得を急務としていた。そこで大学新聞に企業の採用説明会や求人広告を掲載したのだ。
すぐに好評を博したが、社会的背景から大学新聞の発行が滞りがちになったことで、創業2年目に新卒採用の広告だけを集めた情報誌『企業への招待』(現『リクナビ』)を創刊したという。
その後、情報誌は住宅・結婚・飲食と、ライフイベントやライフスタイルに関わる領域へと展開。1990年代には紙メディアからインターネット、そしてモバイルへと転換を図ったが、これにより情報をより手軽に、スピーディに届けられるようになった。さらに消費者と企業に対して利便性を提供することを目指し、現在ではクラウドを活用したSaaS(Software asa Service)ソリューションの拡大も加速している。
個人と企業の新しい「出会い」を一つひとつ結んできた同社。人々の「まだ、ここにない、出会い。」を応援し、自分らしい選択ができる世の中へ。これがサービスに共通する想いとなっている。そして今もなお大切に受け継がれながら、2021年には株式会社リクルートと事業会社7社が統合。新生株式会社リクルートとして、歩みを進めることになった。
こうした中で美容領域に展開したのは、2000年のこと。紙媒体の『HOT PEPPER』が創刊され、街の情報誌として、各エリアの飲食店や美容サロン、おけいこスクールなどが掲載されていた。そして2007年、美容領域のWEB版としてオンライン予約サービス『ホットペッパービューティー』がスタート。その後、業務支援にも注力し、2012年6月から同サイトに掲載するサロンが無料で使用できるサービス、『SALON BOARD(サロンボード)』がスタートとした。
リクルートブランド
目指す世界観
Follw Your Heart
直訳すれば、「あなたの心に従おう」。
物質的な豊かさが本当の豊かさではない。
ひとりひとりが自分で自分の人生・スタイルを選ぶことが出来る世の中。
十人十色、百人百色の自己実現が可能な世の中こそ、豊かな世の中
であると、リクルートは考えています。
自分の心に従って行動を起こすとき、リクルートはあなたを支える存在
でありたいという思いを込めています。
株式会社リクルート
経営理念
<基本理念>
私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。
<ビジョン[目指す世界観]>
Follow Your Heart
一人ひとりが、自分に素直に、自分で決める、自分らしい人生。本当に大切なことに夢中になれるとき、人や組織は、より良い未来を生み出せると信じています。
<ミッション[果たす役割]>
まだ、ここにない出会い。
より速く、シンプルに、もっと近くに。
私たちは、個人と企業をつなぎ、より多くの選択肢を提供することで、「まだ、ここに
ない、出会い。」を実現してきました。
いつでもどこでも情報を得られるようになった今だからこそ、より最適な選択肢を提案することで、「まだ、ここにない、出会い。」を、桁違いに速く、驚くほどシンプルに、もっと身近にしていきたいと考えています。
<バリューズ[大切にする価値観]>
新しい価値の創造
世界中があっと驚く未来のあたりまえを創りたい。遊び心を忘れずに、常識を疑うことから始めればいい。良質な失敗から学び、徹底的にこだわり、変わり続けることを楽しもう。
個の尊重
すべては好奇心から始まる。一人ひとりの好奇心が、抑えられない情熱を生み、その違いが価値を創る。すべての偉業は、個人の突拍子もないアイディアと、データや事実が結び付いたときに始まるのだ。私たちは、情熱に投資する。
社会への貢献
私たちは、すべての企業活動を通じて、持続可能で豊かな社会に貢献する。
一人ひとりが当事者として、社会の不に向き合い、より良い未来に向けて行動しよう。
同社のサービスの共通点。それは、世の中に溢れる「情報」を、圧倒的な速さと便利さで、必要とする人々のもとへ届け、社会の「不」(不満・不便・不安)を解消し、誰もが自分自身に最適な選択肢と出会える機会を提供すること。また、この「不」を探し出し、自ら解決しようとする人々の意志と情熱に賭け、一人ひとりの可能性を育むことで世界を変える力を生み出すことが、価値創造の源泉となっている。
同社は事業や業界の枠にとらわれず領域を拡大し、テクノロジーを活用しながらいち早く情報のデジタル化に取り組み、最適なマッチングによって世界中の「不」の解決を目指してきた。社会や顧客のニーズが急激な変化を遂げている中、これからも自らを進化させ、「まだ、ここにない、出会い」を桁違いに速く、驚くほどシンプルに、もっと身近に創出し続けるよう努めていくという。
<事業領域の拡大>
1960年に大学新聞専門の広告代理店として創業。その2年後、大学生への求人情報だけを集めた「企業への招待」を発行し、今に続く、個人と企業をつなぐビジネスモデル「リボンモデル」を確立。そして中途採用、人材紹介、人材派遣等人材関連事業を拡げるほか、進学、住宅、中古車、結婚等のライフイベント領域、さらに旅行、飲食、美容等といった日常消費領域へと事業を拡大。その後も、SaaS(Software as a Service) を活用し、小売店や飲食店を含む中小企業クライアントに対する業務・経営支援サービスに事業領域を拡大している。
<情報のデジタル化>
一般的にはまだ導入が珍しかった時代からコンピュータを導入し、情報のデジタル化を通じた業務の迅速化と効率化を実践し続けてきた。1980年代のスーパーコンピュータの研究等を経て、1990年代には紙メディア( 情報誌) をインターネットへ、そしてモバイルへと転換。情報をより手軽且つスピーディに届けられるようにしただけでなく、革新的なオンライン予約管理システムを開発する等、個人ユーザーと企業クライアントに情報のデジタル化を通じた圧倒的な利便性を提供することを目指し、現在、クラウドを活用したSaaSソリューションの拡大を加速している。
<グローバリゼーション>
2000年代からグローバル市場への事業展開を推進し始め、当初は結婚関連の事業を中国で展開したものの、数年で撤退。しかしこの経験が、以降のM&Aを通じた海外事業戦略に活かされ、米国The CSI Companies, Inc.の買収以降、人材派遣事業における買収を加速した。買収した組織の生産性向上に取組みながら、欧州・豪州を含む世界各国に事業を拡大するとともに、2012年のIndeed,Inc.、2018年のGlassdoor,Inc.の買収により、HRテクノロジー事業が新たに加わり、グループ全体の成長を牽引している。また、サービス展開が60か国以上に拡大した。