一般社団法人日本メンズファッション協会(MFU/八木原保理事長)ベストドレッサー委員会が主催する『第48回ベストドレッサー賞』の発表と授賞式が11月28日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急で行なわれた。
受賞者は「政治部門」世耕弘也さん(参議院議員)、「経済部門」三木谷浩史さん(楽天㈱会長兼社長)、「学術・文化部門」小松美羽さん(現代アーティスト)・藤舎貴生さん(横笛奏者)、「芸能部門」杏さん(女優/モデル)・ムロツヨシさん(俳優)、「スポーツ部門」羽根田卓也さん(カヌー選手)、「特別賞」西川悟平さん(ピアニスト)の8名。この賞はMFUがファッション意識の向上、豊かで充実した生活の提案、ファッション産業界の発展と各界の文化交流を目指して1972年から毎年、各部門のベストドレッサーを選考し賞を贈呈するというもの。ファッションリーダーというだけではなく、その人のライフスタイルや生き様がそのスタイルに表現されている人物が選出される。
また、これからの日本の文化を創造していく若きクリエーターを表する「第16回ベストデビュタント」の発表・授賞式も併催された。その受賞者は「ファッション部門」李燦雨さん(㈱ACUOD デザイナー/CEO)、「音楽部門」EIKO+ERIKO(ピアノ連弾ユニット)・Songさん(エレキバイオリニスト)、「空間・インテリアデザイン部門」岩瀬諒子さん(建築家・岩瀬諒子設計事務所 主宰)、「特別賞」中込孝規さん(世界とつながるダンス教室 代表・ダンサー)。
特別ゲストとして、ラグビーW杯で大活躍した稲垣啓太選手が登場すると、会場から大きな拍手が沸き起こった。服装は、黒のジャケットスタイル。会食などに着用する私服とのこと。「ラグビーがブームだが、ブームで終わらせず根づくようにしたい。来年もラグビー界がステップアップできるよう努力するので応援をよろしく」と述べた。
ベストドレッサー賞の受賞者はファッションについて、次のように述べている。
〈 〉内は選考理由
「政治部門」世耕弘也さん〈小柄な体型に自信と威厳をもたせようとスリーピースを愛用。ラッキーカラーの赤をアクセントにトップを目指す戦うためのファッションは、志高く使命感が強い〉
絶対にもらいたかった賞。経産大臣時代、外国の大臣と会談し記念撮影すると貫禄負けしたため、ある人からのアドバイスで、スリーピースにした。それ以来愛用している。汗でしわしわになったワイシャツをベストで隠せるので夏場も愛用。
「経済部門」三木谷浩史さん〈日本のネット社会をけん引し続け、ファッション産業界にも深い理解を示す。黒のTシャツやジャケットに身を包むも小物づかいにファッションセンスを光らせている〉
15年前にも受賞。そのときはスーツで出席した。普段の服装は黒がほとんどで、ファッションに別段のこだわりはない。すべてのものをネットで買う時代になり、ファッションは重要な位置付けになってきた。今後はデザイナーの応援や、日本のブランドの海外進出サポートも視野に入れている。
「学術・文化部門」小松美羽さん(現代アーティスト)〈全身全霊をかけて描く神獣の絵が、国内外で高い評価を受ける。その作品を描く魂や心、感情のように、自分のファッションも表現力を大切にしている〉
ディオールの香水のアンバサダーをしており、ディオールのドレスを着用。普段、作業をするときはデニムにTシャツなど、ラフな服装が多い。絵を描くことは瞑想で、ひとつのことに集中する瞑想と、そうでない場合とは違っていてギャップがあるとよく言われる。
「学術・文化部門」藤舎貴生さん〈古典芸能を継承しつつ、時代ごとに生まれる流行や空気を敏感に察知し独自の感性で活躍。服装にこだわりはなく、気分、感覚で自由に着こなして感性が豊か〉
羽織袴姿で出席。ベストドレッサー賞は、純邦楽で初受賞。EXILEとの競演など、ジャンルを超えての活動を積極的に行なっている。古典は守るだけでは廃れるので、常にその時代の作品を創らないと伝承されないと思っている。ファッションは仕事と同じで、いいと思ったものをとり入れる。だいたい、心のもちようが服装に表れていると思う。
「芸能部門」杏さん〈女優とモデル、三児の母で子育てをしながら撮影をこなす。時間を有効に大切に使いこなす。その日の仕事に合わせつつ機能性も考慮した服装で、ファッションを楽しみ着こなしている〉
ファッションは楽しむというより、その日の仕事がしやすい服選びをしている。それがベーストなり、子育てで生活スタイルが変化してからも自宅で洗えるなど、機能的な要素が加わった。ボトムスはいつでも膝がつけるものを選んでいる。
「芸能部門」ムロツヨシさん〈映画、ドラマ、舞台、そしてCMやバラエティー番組にも出演。プライベートも役柄に一貫したファッション哲学をもち、ゆったり、リラックスした装いを好む〉
仕事では、スタイリストが選んだものを着用。その服を買い取り、プライベートで着ることもある。最近は、10代の頃に憧れていたブランドの服を値段を見ずに買えるようになった。ダラダラできる、気持ちのいい服、ラクで動きやすい服を選ぶようになってきた。
「スポーツ部門」羽根田卓也さん〈リオ五輪カヌースラローム競技で日本人初の銅メダル。東京五輪代表内定。ファッションに興味がないといいつつも、シンプルで機能性のある装いが似合う〉
服を選ぶときの基準はとくになく、着やすさで選ぶ。体の動きが妨げられるような服は着ない。シンプルを心がけ、過剰に着飾らない。重要視しているのは、生き方。そういうものが内面からにじみ出れば無条件にカッコいいと思う。
「特別賞」西川悟平さん〈難病ジストニアで演奏機能を失うも、努力と奇跡の復活を遂げた7本指のピアニスト。曲の構成の巧みさや演奏の美しさ、軽妙な語り、そして緻密に計算されたステージ衣装に身を包む〉
コンサートはクラシックからジャズ、ロックンロールへと流れを組み立てることが多く、最初はジャケット姿で演奏し、ジャズではベストスタイルに、ロックではさらに袖をまくるといった具合に、曲の雰囲気にマッチするよう意識している。